コラム

NBCラジオ「2023年長崎県経済の見通し」2022.12.26放送分

2022年12月27日

 2022年の長崎県経済を振り返ると、新型コロナウイルス感染の影響がやわらぎ、個人消費が回復してきて、2022年度の経済成長率は、全国的に1.7%前後となる見込みです。最近では修学旅行生や個人観光客が回復し長崎市では8月に県外訪問客数が18万人とピークを付け、その後も、9月の新幹線開業後、長崎県全体で着実に観光客数が増加しています。ただ、コロナウイルス感染の第8波も懸念され「ウイズコロナ」の状態が続いています。

 観光以外では、予想外に「ロシアのウクライナ侵攻」によって、原油価格・食料品価格が世界的に高騰して経済に打撃を与えてきました。日本にとっては、円安の進行もあって、景気は今のところ落ち着いています。2022年については、「晴れのち曇りのち晴れ」となりました。エネルギー価格・食糧価格の影響で景気が落ち込んだものの、秋以降、コロナウイルス感染が落ち着いてきたこともあり、再度晴れてきたのではないかと思います。しかし、物価上昇の影響が来年も続き、海外の金利上昇、日銀の金融政策変更もあったので、この晴れは長続きしないおそれがあります。

 来年2023年の日本と長崎県の景気は.新しいコロナウイルスが猛威を振るわなければ、景気回復は暫く続き、すぐに不況が来るということにはならないと思います。ただ、エネルギー価格・食品価格が高止まる可能性が高く、賃上げが行われても、実質所得が伸びにくいので、日本の実質GDPの成長率は、今年の1.7%前後から、来年は1.5%程度に鈍化すると予測されます。

 長崎県の経済の現状と展望は現在、長崎県経済は、日本全体と同様、コロナウイルス感染が下火になっていることから、観光が回復したこと、緩やかながら個人消費が回復していること、電子部品・デバイス生産高が回復してきたことなどから、緩やかな回復を見せています。ただ、雇用者所得が前年比やっとゼロになったこと、消費者物価が急上昇していることから、個人消費は今後も楽観が許されません。また、貸出金が全国が増加しているのに対し、長崎県は、ほぼ横ばいで推移していることから見て、厳しい状況が続くとみられます。

 来年2023年は、今年よりも景気が悪化することが予想されるということですが、生活や仕事の面で変化することはあるでしょうか?

 第一に、今年西九州新幹線が開業し、長崎県・佐賀県の観光客が増加してきています。2023年秋には、新長崎駅ビルも完成し、マリオットホテルが開業する予定です。長崎・佐世保への観光客が増加し、出島メッセの利用者も増え、客単価も上がってくると予測します。

 第二に、今年は急激な物価上昇が起こり、今はエネルギー価格など、物価が落ち着いてきていますが、2023年は、食品価格など物価が高止まり、これに伴ない、賃金も2%程度上がると見ていますが、実質所得は余り伸びず、世界的な不況の影響もあり、景気は厳しい状況になると予測します。しかし、2023年末後半のアメリカを中心とした

 世界的な不況の影響もあり、景気は厳しい状況になると予測します。しかし、2023年末後半のアメリカを中心とした金利低下、物価の落ち着きを反映して、2024年には、徐々に景気は回復することが予想されます。

 第三に、表面上はDX化が余り進んでいるように見えないのですが、デジタル化は製造業・サービス業を問わず、徐々に進展していて、行政のDX化が来年末くらいに進展してくると、一気に進む可能性があります。この流れは、農業・水産業・医療・福祉・交通等の分野にも及ぶと予想されます。また、国のデジタル田園都市構想が具体化してくれば、県内にもいくつかのスマートシテイが生まれるかもしれません。

 来年の景気を天気予報に例えると.「曇りのち小雨、年末晴れ」と予報させて頂きます。前半は、物価の高止まりのために個人消費が伸びにくくなり、世界景気の悪化の影響を受けて、景気が年後半にかけて落ち込む恐れがあります。一方、コロナからの回復により、観光は伸びて、長崎を始めとして、景気を上向かせる可能性もあります。来年年末くらいには、薄日が射し、2024年に向けて、明るい展望が見えてくるのではないかと思います。長崎には、2023年新長崎駅ビル開業、2024年スタジアムシテイ開業等、100年に一度の明るい材料が続きますので、これらを追い風として、景気の落ち込みを回避できるかも知れません。

  • 【日時】
  • 2022年12月27日

菊森 淳文

理事長

菊森 淳文

きくもり あつふみ