長崎港の現状と課題
(1)現状
長崎港は、人流・物流両面から、地方港湾としての重要な役割を担ってきている。長崎港は、(ア) 尾上・丸尾・元船地区、(イ)常盤・出島・松が枝地区、(ウ)女神地区、(エ)小ヶ倉地区、(オ)小ヶ倉柳・土井首・毛井首地区、(カ)香焼・深堀地区、(キ)神の島・皇后地区、(ク)立神・福田・小江地区、の各地区に分かれ、それぞれ旅客・物流・造船等の機能を担っている。長崎港は、五島・上五島といった離島への人流拠点として重要な役割を担っている。また、国際観光船の寄港地として、近年重要な役割を担っており、松が枝地区は、急増する寄港数(2017年で267隻)と、東アジアクルーズ船等の大型化に対応するため、既存岸壁の水深・延長を変更し、新たな岸壁の設置、2バース化が計画されている。
(2)課題
長崎港の魅力づくりの課題は、「港湾施設の利用度の向上と活性化」である。このため、弊財団が申請者となって、国土交通省に「みなとオアシス」登録申請を行い、これを契機として、地域住民や民間事業者を含めた地域活性化を行う計画である。
「みなとオアシスNAGASAKI」による長崎港の魅力づくり
(1)「みなとオアシスNAGASAKI」の概要(申請中)
申請中である「みなとオアシスNAGASAKI」の概要は下表の通りである。
(2)みなとオアシスを活用した地域振興
①地域振興の目的
長崎港のベイエリアは、戦前・戦中は、軍需工場が立地していたこともあり、県民に親しみの持てる地域となりにくかった時期もあったが、戦後平和都市として発展を続ける長崎市において「長崎市中央部・臨海地域」の都市再生が進展する中で、長崎新県庁から松が枝に至る港湾・公園施設が、地域振興にとってかけがえのない地域へと変貌を遂げている。この地域では、それぞれの地区で多彩なイベントが開催されていたが、地区間で連携が取れていないことなどから観光客がベイエリア内の他地区に足を運ぶ状況ではなかった。各地区が連携してみなとオアシスに認定されることにより、各施設間での連携した情報発信やイベントが行われ、長崎港の全国的な認知度をさらに高めたい。また、エリア内を訪問した観光客を周遊させることにより、賑わいの空間を創出し、ベイエリアを核とした地域の活性化につなげていきたい。
②地域振興の内容(概要)
『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』の世界文化遺産登録にはじまり、県庁舎移転、九州新幹線西九州ルートの開業、長崎駅周辺の交流拠点施設整備等、今後長崎港周辺を取り巻く環境が大きく変化していく中で、長崎港の港奥部に位置し、日常より地域住民や観光客が多い空間である尾上地区~松が枝地区は、大変魅力的なベイエリアであると言える。このベイエリアを対象として、「みなとオアシスNAGASAKI」を設立し、エリア内の各施設が相互に情報を発信・共有することにより、エリア全体で連携の取れた賑わい空間の創出を行っていく。
具体的な取り組みとしては、(ア)クルーズ船寄港時やエリア内でのイベント開催時の訪問者をエリア内の他の施設へ誘導することができるような施設間連携や共同のイベント開催、(イ)ベイエリア全体を地元住民の交流・散策の場としての認知を高め、住民が主体となった交流イベントの開催、(ウ)ベイエリアの背後にある観光施設・民間事業者等との連携を強め、港に着いた観光客が、主要観光施設や周辺街区に足を運び、背後地・港湾両方の活性化を図ること、等を行う。
また、「みなとオアシスNAGASAKI」をイメージした統一ロゴ・キャラクターグッズ等の企画立案を行い、全国的にPRすることにより、長崎港ベイエリアでの取り組みを全国的に周知していく。
長崎港の将来
長崎港は、新幹線開業(陸の入り口)・長崎駅周辺の開発地域と近接する立地にあり、松が枝(国際観光船の寄港)、大波止(離島航路の発着・端島クルーズの発着)を中心に、さらなる世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」登録を控え、国内外の観光客が急増することが考えられる。長崎県が安定的に「観光立県」により発展するためには、「観光客数」と、「観光消費額」の増加が不可欠であり、港湾施設のさらなる活用・賑わいの創出・ベイエリア全体の交流人口の拡大は、これら二つの目標に向かって付加価値を高めることになる。そして、将来的には、松が枝の2 バース化や長崎港域の拡大等、「海によって繁栄」してきた長崎らしい発展を遂げていくことが考えられる。その第一歩として、「みなとオアシスNAGASAKI」の着実な実績作りに取り組んでいくべきと考える。