全国各地で緊急事態宣言が出されている現在、新規採用の抑制や学生の内定取り消しなど人材確保の面でも大きな影響が出ていますが、必ずしもマイナス面だけではなく現状を「好機」ととらえた動きも見られます。今回はピンチの中での人材確保のあり方について考えてみます。
学生の就職活動に大きな影響
政府が主導している就活スケジュールでは3月から採用情報公開・エントリーが開始されており、通常の4月といえば正に就活一色の時期と言えますが、今年はコロナの影響により企業説明会の中止が相次いでいます。
就職情報発信大手リクナビの調査によると、学生の83%がコロナの感染拡大が自信の就職活動に「何らかの影響があった」と回答しています。この影響は大都市圏から遠く離れた長崎や佐賀では、心理的負担も含め更に大きなものとも予想されます。
もはや普通になったオンライン説明会
リアル説明会の開催が難しい中、「WEBセミナー・企業説明会」の開催が活発化しています。就職情報発信大手(株)ディスコの調査によると、オンライン上でのセミナー・説明会に参加経験のある学生は、21年卒で85.8%と前の年の63.7%よりも20ポイント以上上昇するなどその定着ぶりがうかがえます。
実際、長崎や佐賀でも県庁が主体となったオンライン説明会が開催されており、大都市・地方問わず、もはや企業説明会は「オンラインが当たり前」と言える時代もそう遠くないでしょう。
厳しい就活とは裏腹に「転職市場」は活況
就活が苦労する中、「転職市場」は活性化しています。この背景には、厳しい状況だからこそ優秀な人材を確保したい企業側のニーズと、テレワークなどによりこれまでの働き方を見直し、将来のことをじっくり考える時間が生まれ、新たな道を模索しようとする労働者側のニーズが合致した結果とも言えます。
大手転職支援企業エン・ジャパン(株)の調査によると、企業の4割が現在のコロナ影響下を中途採用の「好機」と回答しています。具体的にはベンチャーや中堅中小企業などで、特にIT系など技術系企業の人材確保の意欲が旺盛であることが窺えます。
歴史を振り返ると、アマゾンや楽天などのIT企業の多くはバブル崩壊後に設立されたものです。時代は就職氷河期でしたが、こうした厳しい状況下で優秀な人材を獲得した企業が現在の地位を確立しているとも考えられます。
今こそ人への投資を。地方にとっては人材確保の大きなチャンス
コロナがもたらした影響は大変なものですが、本当の意味での働き方改革や東京一極集中の是正など、訪れるべき未来を少しだけ早まらせたと思うと、多少は気が休まるかもしれません。
自然災害も少なく生活環境が良い地方で暮らすことの意義・素晴らしを、地元学生はもとより全国の働き盛り世代の方が認識する良い機会ととらえ、地元企業の情報発信から受入環境の整備、大都市圏のサテライトオフィスの誘致など、アフターコロナではなくアンダーコロナの今から、やるべきことをしっかり考えておく必要があります。
今こそ、企業、行政、関係機関、そして県民が一体となって長崎の底力を見せる時です。私たちも全力でその活動に加わり力になりたいと考えています。
※執筆者の個人的見解であり、シンクながさきの公式見解を示すものではありません