レポート

(第1部)コロナウイルス感染が経営を変える―コロナ後の世界に向けてイノベーションを

2020年06月05日

コロナウイルス感染後、世界の人間が外出を控えて、人との接触を極力避ける行動変容を迫られました。一時的にせよ経営面でご苦労されている事業体の方々も多くおられます。感染拡大が収束することで、行動はコロナ以前に戻ると考えられますが、全てが戻る訳ではなく、技術的・経済的・社会的要因によって、行動が変容する部分があると考えられます。本稿では、コロナウイルス感染を機に、経済・社会の変化を受けて、企業や非営利団体の経営がどのように変わるか、考えてみたいと思います。なお、本稿をまとめるに当たって、長崎県の企業経営者10人に、将来展望や、今後の経営戦略等についてお話を伺いました。

 1.  経営環境の変化

企業や非営利団体を取り巻く環境の変化が、経営戦略や経営管理を大きく変える可能性があります。コロナ後に変わる環境変化を、経済・社会・技術に分けて考えてみたいと思います。

(1) 経済の変化:経済面では、循環的に、2020-2021年にかけて、世界的に、当面景気が落ち込み、生産が減少、失業者が増え、デフレ傾向になると考えられます。しかしその後、需要が回復し、生産も回復していきます。需要が回復する過程で生産が順調に増えなければ、一時的にインフレ傾向になることも予想されます。一方、構造的には、①世界経済の貿易・人流の減少、②必要な商品(食品・日用品等)とそうでない商品(贅沢品等)の二極分化、③これを反映して、経営の巧拙により、経営の二極分化が起こると予想されます。

(2) 社会の変化:コロナ後の社会は、底流部分では大きく変わることがないという考え方があります。世界各国や日本の文化の基盤が変わることはないからです。一方、①社会が一定の感染再開リスクを抱えていることから、大きなリスクを取らず、行動が慎重になること、②生活の衛生観念や消毒の徹底など、これまで以上に飲食・洗濯・理美容等基本的なサービスへの関心が高まること、③食品の生産・流通等、口にするものの安全(HACCP等)への関心が高まること、が考えられます。また、コロナウイルス感染が落ち着いてくれば、既に製薬業界で起こっているように、「治療から予防」へのシフト「ヘルスケア産業」へのシフトが起こることが予想されます。

(3) 技術の変化:人と人が接触しなくても目的を達することができるサービス(非接触型)等を、先端技術の導入(オンラン教育・オンライン医療・オンライン会議等)によって行うことが、コロナウイルス感染拡大後、一般的になってきました。Society5.0で、5Gを基盤として、IoT/AI/ロボットなどが導入され、人の代わりをするようになっていくものと考えられます。ATMやPCやインターネット等どんな技術でも、導入された時には、先駆者・advocatorのみ使う状態でしたが、急速に浸透することになったことを振り返れば、テレビ会議システムや電子決済等に使えるブロックチェーン技術も急速に普及すると思います。ちなみに、最近1年間で、高齢者層のECサイト利用が加速し、2020年1月の70歳台のクレジットカード利用は前年比122%、60歳台でも同113%と増加しています(表1)。また、コロナウイルス感染拡大後のクレジットカード決済の決済件数・決済総額を業種別にみると、スーパー、ホームセンター、ECモール・通販で大幅に増加しています(表2)。技術の変化に伴い、消費者行動が大きく変化していることがわかります。東京大学大学院渡辺努教授の分析・予測によれば、コロナウイルス感染拡大後、オンライン(インターネット)購買が広がったことは事実ですが、今後もこの傾向が続くかどうかについては、オンライン購買が増加しつづけるのではなく、「オン・オフ併用」になるとみています(表3)。

 2.  経営戦略の変化

このような経営環境の変化により、企業・非営利団体等の経営体が戦略的対応を余儀なくされ、あるいは進んで経営戦略を変える可能性があります。

(1) 迅速なビジネスモデルの変更:今回のコロナウイルス感染拡大で、「市場」と「商品・サービス」のうち、市場が大きく変わるので、現状のままだと収益が上がらなくなる可能性があり、収益構造を根本的に変える必要が出て来ます。市場の変化としては、①市場の急速な縮小、②市場構造の変化、③市場の新しい安定、が考えられます。例えば、ウイルス感染の危険性から、外食習慣から中食(なかしょく)へのシフトが進むと、一時的には、食事に対する消費金額自体が縮小するとともに、「家で食事する」ことが新常態(new normal)になり、冷凍食品や生鮮食品の需要が高まります。一部は、外出を控えるので、インターネットによる商品購入にシフトします。しかし、いつまでもこの状態は続かず、「より美味しい食事」を求めて、中食の中でも、低価格商品を求める顧客層と、ハイクラス商品を求める顧客層に二極分化し、これが実店舗でも、オンラインショップでも起こると思います。いずれ外食習慣が戻ってきた際に、完全にコロナウイルス感染前に戻るというよりも、顧客層による「選択」が行われ、外食・中食とも二極分化が進むと考えられます。これは、背景に、所得状況が二極分化するという経済的理由もあります。この①~③の一連の変化を考えると、環境変化が、変化のショックを乗り越えて、新しい消費行動を生み出し、新しい消費構造を作ったことになります。

(2) 迅速な意思決定:経営環境が急速に変化すると、経営者や経営陣は、最初はどう動いたらいいか分からない状態になりますが、売り上げが激減したり、顧客の消費構造が変化する状態を見て、経営戦略の変容に向けて行動を取るようになります。この迅速な意思決定こそが、その後の企業や非営利団体等の経営を左右することになると思われます。

(3) 技術革新の取り込み:これまででも金融も物販も医療サービスも観光案内も多言語対応も、インターネットが多くの商品・サービスの提供方法も、コストも変えてしまいました。同様に、現在でも5Gを背景として、AI/IoT/ロボットの活用が人々の生活を変えると同時に、経営戦略も大きく変えることになると思います。

  • 【日時】
  • 2020年06月05日

菊森 淳文

理事長

菊森 淳文

きくもり あつふみ


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