経済産業省は、今年5月、2030年には脱炭素電源を6割程度に引き上げる方針を打ち出しました。2019年度では、76%が火力発電で、原子力が6%、再生可能エネルギーが18%でした。このうち、再生可能エネルギー比率を4割近くに引き上げることになります。火力は76%から4割程度へと大幅に引き下げ、反対に原子力は、6%から2割程度へと高める見込みです。この背景には、脱炭素化を図り、地球温暖化防止やSDGsを推進するという目的があります。
現在でも、再生可能エネルギーによる調達は太陽光発電・陸上風力発電を中心に行われています。これを飛躍的に高めるために、国は官民協働で、洋上風力発電を急速に拡大する方向を昨年12月に示しました。すなわち、現在年間1-2万キロワットの発電量を、2030年に1,000万kw、40年に3,000-4,500万kwに引き上げることになります。このため、原発45基分の洋上風力発電所を建設することが必要になります。
洋上風力発電には、着床式と浮体式があり、着床式は、比較的陸に近いプラントの基礎を建設するもの、浮体式は、海上に船を浮かべるようにプラントを建設するもので、いずれも巨大な鉄の構造物を海上に建設する技術が必要になります。日本の造船や機械や建設の技術を用いて十分に可能な建設です。ただ、地元地域の合意や国への地区指定を得るための手続きに時間がかかるため、計画に着手してから10年程度かかるとみられています。したがって、洋上風力発電だけでなく、これまで増やしてきている太陽光発電も並行して増やすことが必要となるとみられています。
長崎県の電源全体に占める再生可能エネルギーの割合は現状ではまだ低く、そのうち太陽光発電は72%とほとんどを占めています。風力発電は14%で、現状では陸上風力発電がほとんどですが、今後は国の政策もあり、洋上風力発電が急速に伸びて主流になると考えられます。
長崎県は離島・半島が多く、風も強く、洋上風力発電に適しています。現状では、五島市の浮体式洋上風力発電が日本で初めてのプラントとして存在しており、今後発電所プラントを五島市沖に10基建設する計画があります。このほか、西海市江の島沖が地区指定され、今後具体的な洋上風力発電所建設が行われることと思います。県内だけでも、他の海域にも地区指定が行われれば、発電所が建設されるようになると思います。
電源構成が変わることにより、CO2削減が図れ、今後急速に増えることが予想されている電気自動車の電気を賄うことになります。一方、政府によれば、太陽光と風力の新たな発電設備導入などにより、標準的な家庭の電気料金への上乗せ額が、年に1~1.8万円となる試算もあり、この消費者負担をいかに下げて行くかが脱炭素化に向けた課題となります。再生可能エネルギーの導入は、それなりの負担を伴う可能性があるのです。