コラム

NBCザ・チャージ(8月24日放送)「長崎県の第三の極としての県央」

2021年08月24日

 県央は、大村市・諫早市を二大都市とする地域です。人口は、大村市が9.4万人、諫早市が13.6万人で、合計23万人。長崎県全体に占める人口の比率は17%です。また、生産額は、2017年時点で大村市3,203億円、諫早市6,362億円で合計9,565億円。長崎県全体に占める比率は21%です。生産額が県全体の1/5を占めています。

 しかも、生産額の伸びが、2006年と比べて9%の伸び、これは、長崎市の6%、佐世保市の-2%よりも大きい数字となっています。すなわち、生産額が大きいだけでなく、県内では成長力の大きい都市なのです。産業の中で、製造業の比率が高く、二つの市ともに、工業団地への企業誘致が着々と進められてきたからです。新しい工業団地も整備され、現在も企業立地が進んでいます。

 長崎市や佐世保市と比較して、観光資源が少なく、「観光都市」という感じがしません。長崎市の歴史文化遺産、佐世保市のハウステンボスに比べると、観光資源は少ないかも知れません。でも、「工業都市」として、世界的にみても有数の企業が立地しています。しかも、半導体や電子部品等、これから成長する企業が多く含まれています。この点で、将来、長崎県の「第三の極」とも言える地域に成長する可能性の高い地域だと思います。

 県央地域が今後も成長を持続する高いのは、交通の要衝であることも大きな理由です。大村市には長崎空港があり、二つの市には高速道路・新幹線が通っています。人流・物流両面で交通手段が整っていると思います。

では、県央は今後、どのような地域づくりをしていけばいいでしょうか?

 第一に、大村市・諫早市・東彼杵町と連携した「産業の核づくり」です。今でも、半導体・電子部品、自動車部品の工場が集積していますが、今後、航空機・EV(電気自動車)など、国策に沿った産業構造を強化していくことが可能です。道路は物流面、新幹線は人流面から産業を支えると思います。博多から大村までは1時間で移動することができるようになるからです。

 第二に、産学官連携による「研究学園都市」の形成です。大村市には、活水女子大看護学部、諫早市には鎮西学院があります。また、県の公設試である、工業技術センター、環境保健研究センターが大村市にあります。そして、誘致企業をはじめとする有力企業群があります。AI(人工知能)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)技術が後押しして、技術革命が進展していきますので、製造業は常に研究開発をすることが必要になります。この点で、産学官連携した「研究学園都市」の形成が進むと思います。大学や専門職育成のための大学院など、科学(サイエンス)・技術系の教育研究機関も必要になると思います。

 第三に、IRやMICEを支える「交通の要衝」としての機能の強化です。MICEは今年秋から長崎駅前に開設されます。また、IR(特定観光複合施設)がもし佐世保市設置が国の承認を得られたら、IRのMICEを含め、富裕層を含めた多くの人々が、空港のある大村市を通過することになります。長崎空港から海上輸送や、ヘリコプターでの輸送の拡充、プライベートジェットの離発着への対応も必要になります。まさに県央が観光客の人流の要となるのです。

 最後にこの地域の課題は、工業高校を含む高校や大学の卒業生(人材)を県央や県内にとどめておけるだけの、仕事や生活の豊かさだと思います。県央の生活環境は良好で、医療・福祉も充実しています。あとは、給与を含む労働条件や「働き甲斐」のある労働環境、子育て環境の整備ではないでしょうか。

  • 【日時】
  • 2021年08月24日

菊森 淳文

参与

菊森 淳文

きくもり あつふみ


県央地域としての大村市の位置


2021.8.1に大村市プラザおおむらホールで開催されたシンポジウム「県央地域と東アジア交流学園都市と大村」(主催:新長崎学研究会)。(写真は、大村ケーブルテレビ提供)