私は、毎年、長崎県立大学大学院で、「離島経済文化振興特論」という科目を集中講義の形で、担当させていただいております。
長崎県は全国で最も離島の多い県です。離島に関しては、離島振興法・国境離島新法によって、離島の不利性の除去がうたわれ、各種施策が実行されてきました。人口減少・高齢化が県内でも先行して進展してきました。現時点ではコロナウイルス感染継続により、人口の移動が小さくなっていますが、「ウイズコロナ」の状態に移行すると、徐々に移動が再開されます。元に戻るという面もありますが、一方では、健康的で安全安心な環境を求めて、移住者が増える可能性もあります。今から、「ウイズコロナ」「アフターコロナ」に向けた、新しい準備をすることにより、以前にもまして、「離島が輝く時代」が到来すると考えます。
私が今年9月に出版させていただいた「ウイズ&ポストコロナの生き方」にも、これからの経済・社会の変化と対応策について書いています。
1. 離島の特性を活かした弱点の克服へ
(1)スマートシテイ化による医療・福祉・教育など基本的な生活面でのICTの活用による変化です。オンライン診療・健康管理、福祉施設の運営管理、オンライン教育などの分野で、これまでにないICT、AI活用が実験的に行われています。このようなICT活用は「ウイズコロナ」下でも定着し、特に離島生活にとって不安があった医療について、一次医療・予防医療の分野の充実により、改善がみられるようになると思います。
(2)観光の緩やかな回復が、まず国内観光客に見られるようになります。その際に、離島への船・飛行機のアクセスや島内移動、観光情報の充実を簡便に図るために、MaaSと言われる、総合的な交通・観光支援アプリが機能するようになると思います。
2. 離島の資源・強みを活かした世界的な展開を
(1)離島の再生可能エネルギー活用による電力供給基地化です。長崎県・佐賀県の離島は、日照面から太陽光発電に適しており、また、常時、風(かぜ)資源に恵まれているため、風力発電に適しています。離島のエネルギー安全保障面も重要ですが、売電を通じた全国への電力供給、水素エネルギー化も進められています。このような動きに対して、日本・世界の投資家が長崎県・佐賀県に注目するようになると思います。
(2)離島の第一級の自然・歴史文化資源活用による世界的なリゾート化です。離島は、自然資源・歴史文化資源ともに、世界的に価値の高い存在です。文化的にも、島によって歴史・文化が異なり、多様性があります。新上五島町のリゾートホテル「マルゲリータ」、五島市のリゾートホテル「五島リトリートray(レイ)」など、「ウイズコロナ」になれば、離島の魅力に全国や世界が注目するようになると思います。
離島は、わが国全体にとって、国土・海域確保、海の治安維持、魚介類等食糧確保の拠点など、国家的な役割を担っていることを、多くの日本人に理解し、支援していただきたいと思います。また、国内外の民間企業にとっても、離島は大きなビジネスチャンスであることに気づき始めています。