今年3月に、私が会長を務めさせていただいてきた第四次壱岐市観光振興計画が策定・公表されました。コロナウイルス感染拡大のため、計画策定を1年延期し、ウイズ&アフターコロナの時代にふさわしい観光の在り方を市及び委員と検討しました。
ウイズ&アフターコロナで観光がどう変わるかについては、私は、4つの変化がすでに起こっており、この変化は根強く残る可能性が大きいと見ています。
まず1点目は、「観光客が変わる」です。コロナ感染前にはインバウンド客がきていましたが、今はビジネス目的の方など、限られた方々が離島の観光に来ていただいています。国内観光客がほとんどとなり、観光客数もコロナ感染前まで戻っていません。計画でも、2024年までに、観光客数を戻すことを目標にしています。
2点目は、1点目と関係するのですが、観光客数が減ることにより、丁寧な「おもてなし」ができるようになり、観光の形態も長時間滞在観光化が進み、客単価が上がる可能性が出てきました。観光事業者側も、客数の減少を単価上昇で補う必要があり、自然に「高付加価値観光化」に向かうと考えられます。すでに、離島でも高級ホテル・旅館は稼働率が高まっているなどの現象が起こっています。したがって、高付加価値観光にシフトできた観光施設は、成長の余地が大きいということです。観光は「時間多消費型産業」の典型ですから、滞在時間が長いほど客単価は増えますし、時間が短くても質の高いサービスが増えれば、顧客満足度と客単価が上がります。温泉・釣りやスポーツのメニューを増やし、食事の提供もホテルだけでなく幾つかのレストランと連携して、ダイバーシテイ(多様化)され選択可能性を高め、楽しい旅にすることが可能となります。観光も、「量から質への転換」が求められます。
3点目は、健康・衛生・安全に対する意識が高まり、非接触サービス・クレンリネスが従来以上に求められます。料理なども「大皿料理」よりも、「取り分け」・「個人別」が標準になるかも知れません。ホテル・旅館のアメニテイの向上も不可欠で、これは女性客の増加ともマッチしています。
4点目は、ウイズ&アフターコロナでDX化が急速に進展しており、スマホやタブレットを使った利便性とコストに優位性のあるサービスは大いに伸びると思います。MaaS(mobility as a service)と言われる、目的地までの公共交通案内や料金決済、観光情報提供ツールは、まだ試行段階ですが、これから必要性が高まると考えています。離島の場合、公共交通の手段と頻度が少なく、レンタカー情報など、「足の便」に関する情報提供が喜ばれると思います。これは、市町全体で取り組むべき課題だと思います。
一方、離島観光の強みについては、離島観光には、本土では味わえない、大自然・食・歴史文化などが備わっており、マリンスポーツなど、海で楽しめるメニューも多くあることが、最大の「強み」です。地元の方々は日常なので、感動しないと思いますが、観光客にとっては、「魅力の塊」です。だからこそ、「楽しみ方を多く提供する力」によって、観光に差ができて来るのです。
もう1点は、壱岐市観光振興計画を策定する過程で議論されたのですが、「島を上げた」「市民一丸となった」おもてなしが可能なことです。「壱岐神楽」など伝統芸能の演舞や、質の高い観光ガイドや、伝統料理(ひきとおし、およごし等)の提供など、様々なイベントには、市民・町民の協力、「地元コミュニテイの力」が不可欠です。「島全体でおもてなし」と言った感覚を味わうことができるのは、離島ならではではないでしょうか。
このように考えていくと、「離島しか味わえない喜び」を幾つ提供するかが、観光客の心をつかむ決め手になるのだと思います。離島観光のハンデイを、「優位性」に変えられるのは、島民の力だと思います。早く、コロナ感染前の状態に戻ってもらいたいものですね。