平戸市では、「平戸市物産地域商社構想」を総合的な物産振興戦略を平成21年度から順次、積極的に進めてきています。全国的にトップクラスの「ふるさと納税」、東京・上野の「平戸漁港」・有楽町のアンテナショップ「ひらど商館」とアンテナ飲食店「平戸から有難う」、ネットショッピング型「平戸商店」など店舗販売型地域商社として、展開してきました。もちろん、地元の水産品・農産品を調達して観光客など地元に来る方のための施設も先んじて、「平戸瀬戸市場」「ひらど新鮮市場」「海の見えるご飯屋」など業態展開してきました。これらは、シテイ・プロモーションと物流機能の充実の点から見ても成功しています。
平戸市は、北部九州の西の端です。立派な水産品が獲れますが、市場に出す場合はせいぜい松浦市の西日本魚市場までとなることも多いようです。物流に係る時間・運賃が、平戸市の物産振興のハンディ―となりかねません。このハンデイを乗り越えて東京・関西・福岡での知名度を上げるためには、アンテナ飲食・アンテナショップの形を取ることが有効だったと思います。さらに、今年度から始めるのは、「販路開拓型地域商社」なのです。大都市・海外に積極的に販路開拓をするために、プロポーザル型公募を今回行って、専門家による選考を経て事業者が6月末に公表されました。
市の公表資料によれば、新しい地域商社として決まったのは、「平戸DMC」JVで、メンバーは、平戸観光協会、㈱狼煙(のろし)、日本航空㈱です。㈱狼煙は平戸市で全国的に有名になった「城泊(しろはく)」の企画・運営会社です。日本航空㈱も城泊に関わっておられますが、ファーストクラスで平戸市産の料理を提供していることでも知られています。平戸における「物産と観光の融合」の考え方でもあります。
地域商社として、平戸の食を扱う上質なコンテンツを、大都市圏のターゲット層に対して商品開発し、独特なチャネルで販売することで、「平戸ブランドの構築」を図る、という考え方です。①平戸ガストロノミーツーリズム(その土地の食文化に触れることを目的とするツーリズム)、②平戸食材を使ったビストロ・レトルト商品、③日本航空が展開するアジア・トンロー市場(タイ・バンコク)への鮮魚販売、④平戸の歴史を踏まえスイーツ開発・販売、など、多様な顧客向けに上品な平戸商品の販売をする内容となっています。
今回の提案は、マーケテイング面での平戸ブランド化による、高付加価値商品へのシフトを目指していると考えられます。加えて、ブランデイングによる高付加価値化により、「物流面の不利」を緩和することができると思います。日本航空の物流機能を活用することにより、北部九州の西の端という地理的劣勢を緩和して、鮮魚から「レベルの高いレトルト加工品」などブランド力のある商品の販売することができると思います。顧客層の拡大や、パッケージデザインの見直しなどにより、マーケテイング戦略自体を高度化し、そのための情報発信を強化することもできると思います。
コロナ後の観光は、観光客数がコロナ前には戻らないことを前提として、マーケテイング戦略を考える必要があり、客単価の向上を実現するために、顧客層を選びながら、滞在型観光や、物産との融合を図る必要があります。
また、観光・物産両面で、商品・サービスがSDGs・ESG(環境・社会・ガバナンス)に沿ったものが求められ、この点でも、ガストロノミーツーリズムやローカルフードプロジェクトは評価されると思います。