2019年12月20日、長崎県とながさき地域政策研究所の共同開催で、「先進事例に学ぶ経営改革のススメ~全国が注目する先進的マネジメント手法~」と題して、宮崎県都城市の社会福祉法人スマイリングパークの山田理事長に講演いただきました。主たるテーマは、「ICT・介護ロボットを活用した特養等の実践と介護人材確保対策について~根拠のない恐怖は無視すべきである~」でした。また、第二部として、山田理事長と弊財団菊森理事長とのトークセッション「高齢者福祉と地域を考える」が行われました。そこでは、介護人材の確保・育成・登用の方法、福祉施設と地域協働の方法等が、会場の質問も交えながら討議されました。
【社会福祉法人スマイリングパーク山田理事長講演概要】
・スマイリングパークは、宮崎県都城市にある。都城市長が革新的。民間と違わない行政。挨拶を徹底し、市民は市役所に意見を寄せる。厳しさと応援がある。スマイリングパークでは、ペーパーレス化を図る。職員は手ぶらで来て、帰る。
・小さな法人だが、コツコツやってきた。4代目理事長としての使命を感じている。厚生労働省から、やるべきことをやっているか調査に来られた。社会保険労務士の指導も受け、「正しいこと正しく行っている企業」と評価されている。
・2002年:21名従業員で、離職率25%だった。
・2019年:慶応義塾大学・電通等で利用者の意思がわかるツールを開発した。職員は常にコミュニケーション不足。ケアコミュニケータで、脳波を測定する。
・目の前の入居者を見ている。いわば「だろう」運転。看取りも「その人に成り代わって」というが、本当のことはわからない。終活で本音を言えない方々が多い。iPhoneがベースのボイスファン。眠りSCAN。職員はこのようなツールのある職場を辞められない。ココヘルパー。デジタルミラー。ロボットアシスト。ケアコミュニケータ。指先で車いすを操作。WillタイプCを開発。リフト~腰を痛めないために、スタンデイングリフトを開発。車いすからトイレへの移動も簡単になった。
・バイタルリンクの利用が有効だった。熱・血圧の測定を人間を介さないで行う。自動的だから記載漏れのないようにできる。
・「恐怖」。AI/IoT機器を導入するには、現場が「本当に必要だ」という必要あり。職員を育てるかどうか?物を言える職場にならなければいけない。イーロンマスクの言葉に触発された。都城市。大きな投資をしたら、「首が回らなくなる」と言われる。挑戦する価値はある。労働実態を調査したら、職員はOKで、山田理事長がだけが200時間労働。「ピンチはチャンス」と考えた。
・お金はどうするか?→銀行もシステム開発も競わせた。既存のシステムから乗せ換えるのに勇気がいる。既存業者からは、「移行費用が掛かる」と脅された。
・職員がコンピュータ使えないこともある。これは医療の現場でも起こっている。職員から職員への引継ぎ時、申し送りはコンピュータ上でやればいい。総額を見ると、大きな投資であったが、5年リースにすると、1年あたり、収支の取れる金額だった。ためらう職員に対し、理事長は「必ず駆けつけます。」と答えて安心させる努力をした。スタッフたちが乗り切ることができた。
・新システム導入の際も、職員の扱いも、マイノリテイの方に配慮した。
・ICTは「人と人を繋ぐツール」。車いすは今後、自動運転になっていく。
・職員は一人ひとり幸せが違う。ICT導入は「幸せ造り」。
・新規に60名採用。フェースブックを見て志願してくる。志願者は、施設の毎日をチェックしている。厚生労働省の検査があった際に、「100人います」と言ったら、「その規模ではつぶれる。1,000名が普通。」と言われて、考え方を変えた。
・福祉会発祥の地である「まるの保育園」を新しくした。こども園には、遊具を置かない。子供は土や蟻と遊ぶ。食堂でいろんな仕事があることを知り、職業教育にした。子育て110名。アンケート調査で恐る恐る、「なぜ辞めないのか?」と聞いたら、「上司が威張ってない。」と多くの職員が答えた
・障害者事業はお付き合いの期間が長い。子供6年、大人10年と短いが、障碍者は、50-60年お付き合いする。日本の介護保険は危ない。不安定な介護保険制度がネックになる。施設経営にあh、人件費比率を下げることが必要。人件費率66%から62.2%に下げた。
・福祉法人は黒字法人70%未満。1/4が赤字に転落。これを解決するためにやるべきことは、「人を育てること」。
・人は、「好きなこと」ではなく、「自分が得意なこと」を仕事にするべき。「人と人を繋ぐ。」のが理事長の仕事。
・志が折れない努力を続けるのが一番。自分は結構、遊んでいる。職員をなるべくルールで縛らない。
・知的障碍者にもケアコミュニケータは活用できる。20数種類の感情がわかる。認知症の方の心もわかる。