2019.12.24「対馬観光再生ビジョン・提言書」を、対馬市比田勝市長に、「対馬観光在り方検討会」座長として、弊財団理事長の菊森が提出させていただきました。これは、今年10月18日から12月17日まで、5回にわたり15名の委員が議論し、まとめたものです。対馬市では、今年7月から、韓国人観光客が約9割減少していることを機に、ピンチをチャンスととらえ、今後の観光戦略を検討しました。
【提言の趣旨】
対馬は、日本本土と朝鮮半島の中間に浮かぶ国境の島であり、地理的にも歴史的にも大陸の影響を大きく受けてきました。江戸時代には、日本の大陸との貿易・外交の窓口であり、朝鮮通信使が往来した時代は、島は大変繁栄していました。対馬の著名な郷土史学者・永留久恵氏は、「対馬は、日本と朝鮮半島の仲がよいときは潤い、仲が悪くなると途端にその最前線になる」と言われています。今回、まさしくこの言葉が示す状況になりました。
令和元年の夏から日韓関係が急激に悪化しました。この影響を受け、これまで20年間右肩上がりで増え続けた韓国人観光客は激減しました。特に最近10年間は、旺盛なインバウンド需要により国内外から投資が相次ぎ、平成30年度は41万人を超えた韓国人観光客が突然街から消えたのです。観光消費額が推計で年間約92億円となっていました。それだけに、韓国人観光客の減少は、観光産業の関係者に大きな影響を与えています。
これまでの韓国インバウンド一辺倒の弊害が一気に吹き出したと言っても過言ではないでしょう。観光産業のリスクヘッジができていなかったと言う見方もできます。急に国内観光客に舵を切っても、簡単には対馬を観光先に選んではくれません。内外の観光客を迎えるべく、顧客戦略、受け入れ体制整備、知名度・ブランド力の向上、おもてなしの向上と言った基本的かつ中長期的な「対馬観光戦略」を立て、実施体制を早急に整える必要があります。
対馬には、古代から現在に至るまで受け継がれた豊かな自然・交流の歴史等、極めて豊富な観光資源があります。今は厳しい環境にある対馬観光を根本から見直し、内外の観光客の高い要求水準を満たし、対馬ならではのオンリーワンの観光資源を磨き上げ、将来にわたり持続可能な観光客誘致ができるよう準備をしていかなければなりません。
本提言書は、委員の皆さんの知恵を集約し、対馬市が来年度策定予定の「対馬観光振興計画」の指針となるべく「対馬観光再生ビジョン」をまとめたものであり、是非参考としていただきますよう提言いたします。
令和元12月24日
対馬観光のあり方検討会
座長 菊森 淳文